あまごのぐーちょきぱー

ぐーちょきぱーでー(×2) なにつくろー(×2)

滝つぼと思考のどつぼ

2014年発売のIPadAir2で動くんだから、このアプリは偉い。という謎のボーダーラインを独自に設定しています。

あまごです。

 

閑話休題

 

私は本当に何も見えちゃいなかったのだ。例えば日々、駅構内のトイレ付近でアナウンスされている『滝の御トイレ』についてだ。 

 

毎日毎日、アナウンスされている『滝の御トイレ』。だが私は恥ずかしながら『滝の御トイレ』を使用したことがない。この歳になるまで、まさか使用することがないとは思ってもみなかったが、そういう人もまぁ少なからず居るのであろうと想像する。なぜ想像なのか。それは、私以外から『滝の御トイレ』に関する一切を聞いた事がないからである。私はいま勇気を出して『滝の御トイレ』と記述しているが、もしかしたら言葉として発する事はおろか、文字に打つことすら憚られるようなものなのかもしれない。私には分からない。

 

私にできる事、それは『滝の御トイレ』について考えてみることだけである。滝の、と言うくらいであるからして、そこに入れば雄大な景色が広がっているのかもしれない。周りは草原で所々に背の高い木が生えているのが見える。空は青く、点々と存在している白い雲とのコントラストが実に清々しい。黒い点のようなものが空で動いている。鳥だろうか。奥に目をやると、虹が掛かっている。私はしばし見惚れてから、虹の方へと歩み始めた。

 

しばらく歩いていると、虹の周りに細かい水飛沫が舞っているのが分かった。加えて、重低音が地鳴りのように響いてきた。その音が下腹を揺らし、そこですっかり忘れていたことを思い出した。放尿するためにここに来たのだ。周りをきょろきょろしながら、虹の方へと歩みを進める。虹のあたりに人影らしきものが確認できる。10人ほどであろうか。等間隔で横並びだ。みな虹の方を見ている。同じ境遇の人たちだろうか。訝しみながら進んでいく。

 

どこまで進むべきなのか、と考え始めたところで、もう考えなくて良いと気づかされた。断崖絶壁。もう進めない。恐る恐る、崖の下を覗き込むとなるほど、滝がある・・・。崖の途中から水が勢いよく飛び出していた。下の方は霧が掛かっていて見えない。

 

さて、と一息つき思案する。確かに『滝の御トイレ』に入り、『滝』はあったが果たして『トイレ』はどこにあるのだろうか。ここに来るまでの道中でそれらしい形の陶器は見当たらなかった。一体・・・。崖には同じように10人ほどが等間隔で立ち尽くしてい・・・

 

立ち尽くしてはいなかった。1人がズボンを上げ、チャックを閉めたのだ。ハッと感じて周りを観察すると、崖に立っている人たちは一様にズボン、パンツを下げていた。私は何かに気が付き始めていた。等間隔で横並びの男たちの股間辺りに、これまた等間隔で小さな虹が出来ていた。これが・・・滝の、御トイレ・・・。

 

いや、まて、いくら『滝の御トイレ』だからって実際に滝があるわけでもなかろう。個室の一つが滝になってて、簡易修行場になっているとか、そういう事なのかもしれない。そうさ、『滝の御トイレ』だって・・・

 

滝の御トレイ

滝の御トレイ

タキノオトイレ

タキノオ トイレ

多機能 トイレ

多機能トイレ

 

 

単純に『滝の御トイレ』は『多機能トイレ』の空耳だったのです。油断しているとき、何も考えていないところなんかで、『多機能トイレ』を『滝の御トイレ』だと空耳することがある。そんな時、こんな妄想をするとかしないとか。

 

しかし私は多機能トイレを使用したことがない。つまり、『滝の御トイレ』の可能性もあるんじゃあないかとちょっとは思っている。「シュレディンガーの猫」の思考実験のように。という思いを綴った物語。